シャリア刑法の施行

平成31年4月3日

 ブルネイでは,2014年5月にイスラム教に基づくシャリア刑法の一部が第1段階として導入され,2019年4月3日からは完全施行されました。シャリア刑法には,外国人や非イスラム教徒であっても適用される規定が多くあり,したがってそれらの規定はブルネイ在住の外国人や旅行者も適用対象になります。下記は,同法や他の法令により処罰対象とされる行為の例であり,在留邦人の方やブルネイを訪問される予定のある方は,十分ご注意下さい。これらはブルネイ国内に限らず,ブルネイ航空機やブルネイ船籍船舶における行為も対象となります。

1 人前での飲酒・喫煙
  レストランなどの飲食店,ホテル・ロビーを含め,人前での飲酒のほか,アルコールの販売・購入,イスラム教徒への贈呈も禁止されています。
 ブルネイ航空機内ではアルコールが提供されませんが,免税店で購入し持ち込んだアルコールを機内で飲む行為も対象となります。
 なお,喫煙については,一般法によって,ホテルのロビー・廊下・トイレ,レストラン,オフィス,工場,市場,空港,病院,学校,娯楽施設,公共交通機関を含む多くの場所で禁止されています。
 
2 ラマダン(断食月)中の人前での飲食・喫煙(日の出から日没まで)
 食事はレストラン等で持ち帰り用として購入できますが,必ず自宅・自室内などイスラム教徒がいない場所でのみ飲食して下さい。
 
3 夫婦や家族以外の男女の同棲、不道徳な行為を行っているとの疑惑を生じさせる近接関係を持つこと(相手がイスラム教徒の場合)

4 婚姻関係にある者以外との性行為(婚前・婚外性行為)

5 同性間性行為

6 不道徳な行為(indecent behavior)
 服装については具体的な基準が明確ではありませんが,特に女性は肌の露出度の高い服装での外出は避けるようお勧めします。
 
7 異性装
 
8 イスラム教からの改宗,他宗教の教育
 イスラム教徒を他宗教へ改宗させること,無信仰の者にイスラム教以外の宗教を教えることも禁止されています。
 
9 イスラム教の冒涜
 
10 宗教に関する国王発言の批判・反対・侮辱

11 イスラム教徒男性の金曜礼拝への不参加
 被雇用者のイスラム教徒男性を金曜礼拝に参加させない場合,雇用者が罪に問われます。 

 なお,シャリア刑法では,「窃盗」,「強盗」,「婚前・婚外性行為」,「強姦」,「同性間性行為」,「異常性行為」,「姦通・強姦の不当告訴」,「飲酒」,「背教行為」については,手足首切断や投石による死刑等の身体刑(ハッド刑)が,「殺人」,「傷害」では,被害者が被った死や身体損傷と同等の刑罰を加害者に与える同害報復刑(キサース刑)も規定されており,非イスラム教徒でもこれら刑罰により罰せられるものがあります。
しかしその証明のためには複数の証人が必要であるなど厳格な要件があります。
 また,そもそもブルネイでは一般刑法とシャリア刑法は並立して存在し,いずれで裁くのかは個別に判断されます。
 このため,実際にハッド刑やキサース刑が科されることは容易ではないと考えられます。