シャリア刑法の施行

 ブルネイでは,2014年5月よりイスラム教に基づくシャリア刑法第1段階が施行されています。シャリア刑法には,外国人や非イスラム教徒であっても適用される規定があり,したがってそれらの規定はブルネイ在住の外国人や旅行者も適用対象になります。下記は,現在既に処罰対象とされる行為の例であり,在留邦人の方やブルネイを訪問される予定のある方は,十分ご注意下さい。これらはブルネイ国内に限らず,ブルネイ航空機やブルネイ船籍船舶における行為も対象となります。

1 自宅・ホテル自室以外での飲酒
 レストランなどの飲食店,ホテル・ロビーを含め,公共の場での飲酒,アルコールの販売・購入,イスラム教徒への贈呈も禁止されています。違反行為に対しては,8,000ブルネイドル以下の罰金もしくは2年以下の懲役またはその併科が規定されています。
 ブルネイ航空機内ではアルコールが提供されませんが,免税店で購入し持ち込んだアルコールを機内で飲む行為も対象となります。
 
2 ラマダン(断食月)日中における自宅・ホテル自室以外での飲食・喫煙
 日の出から日没まで。4,000ブルネイドル以下の罰金もしくは1年以下の懲役またはその併科。
 
3 夫婦や家族以外の男女が閉鎖された空間で過ごすこと(Khalwat)(相手がイスラム教徒の場合)
 4,000ブルネイドル以下の罰金もしくは1年以下の懲役またはその併科。年間140件以上の告訴が行われています

4 配偶者以外の異性との性行為(姦通)(相手がイスラム教徒の場合)
 違反者が既婚の場合,30回以下の鞭打ち及び7年以下の懲役。未婚の場合は鞭打ち15回及び3年以下の懲役。
 
5 同性間性行為
 違反者が男性の場合,イスラム教徒であるか否かを問わず,上記4の姦通と同じ刑罰。違反者が女性で非イスラム教徒の場合,40,000ブルネイドル以下の罰金,10年以下の懲役,30回以下の鞭打ち,またはそのうち2つの刑罰の併科。
 
6 不道徳な行為(indecent behaviour)
 2,000ブルネイドル以下の罰金もしくは6か月以下の懲役またはその併科。例えば服装については具体的な基準が明確ではありませんが,肌の露出度の高い服装での外出は行わないようお勧めします
 
7 異性装
 女装した男性が自宅外へ出た場合,1,000ブルネイドル以下の罰金もしくは3か月以下の懲役。さらにわいせつ目的などで女装した場合には4,000ブルネイドル以下の罰金もしくは1年以下の懲役。
 
8 イスラム教からの改宗,他宗教の教育
 イスラム教徒を他宗教へ改宗させること,子供や無宗教者にイスラム教以外の宗教について教えることは,20,000ブルネイドル以下の罰金もしくは5年以下の懲役。
 
9 宗教等に関する国王発言の批判・反対・侮辱
  5年以下の懲役。
 
 なお,今後,国王の裁可が得られれば,2019年3月頃には第2段階,2020年3月頃には第3段階が施行される可能性があります。

 仮に第2段階が施行されれば,非イスラム教徒であっても,妊娠から120日経過後の堕胎や,LGBT(同性愛,バイセクシャル,トランスジェンダー)が新たに処罰対象となります。また,「姦通・強姦・同性間性行為の不当告発」も処罰対象となりますが,これは,例えば強姦被害を受けた女性が相手を告発しても,相手が敬虔で品行の良いイスラム教徒であり,十分な証拠によって被害を立証できなかった場合(下記),逆に不当告発として処罰される可能性があります。

 証言は,人により同等に扱われることは無く,信仰が厚く品行の良いイスラム教徒男性の証言が最も信頼されるものとされ,イスラム教徒女性の場合は2名分の証言がイスラム教徒男性の証言と同等とされます。さらに他の一神教信仰者(キリスト教,ユダヤ教)の証言は過小評価され,多神教信仰者・無宗教者に至っては,その証言はほとんど効力が認められないものとなる恐れがあります。

 また,刑罰として,非イスラム教徒であっても,第2段階が施行されれば,窃盗犯に対する手足切断刑が,第3段階が施行されれば,同性間性行為に対する石打ち刑を含む死刑も導入される可能性がありますので,今後の推移については十分注意していく必要があります。