ブルネイ政治制度

(1) 政体

(1)独立前

ブルネイの独立前の政府の組織及び構造は、1959年憲法に依拠している。同憲法では、すべての行政権限は国家元首としての国王に委ねられていた。

(2)国家元首としての国王

1984年1月1日,ブルネイは英国から国防と外交を継承し,マレー主義・イスラム国教・王政擁護(MIB)を国是として完全に独立した。

政治・行政制度は,独立後も1959年憲法に基づき,統治システムは,君主制と内閣型の組み合わせとなっている。また,2004年の憲法改正により,同年9月,20年ぶりに立法評議会が再開され,2006年以降は,毎年3月に立法評議会が開催されている。

国王は,現在,首相,財務大臣,国防大臣,外務貿易大臣を兼任し,また皇太子は首相府上級大臣として筆頭閣僚の要職にある。

(3)人口・民族・宗教・国民性・言語

ブルネイの人口は,42万2,678人,そのうちマレー系が27万7,700人,華人系が4万3,554人(出典:Brunei Darussalam Statistical Yearbook 2016)。

国教はイスラム教(スンニ派)であり,人口の約8割が敬虔なイスラム教徒である。ブルネイ国内では酒の販売及び異教徒を含めて公の場における飲酒が禁じられており,戒律が厳格に守られている。

総じて教育レベルも高く,また階級や社会的な身分を重視する保守的かつ穏和な国民性である。また近隣諸国を中心として外国人労働者も多数生活している。国語はマレー語であるが,英国との歴史的な絆も深く,初等教育から英語が使用され英語が広く通用している。

(4)政治情勢

基本的には1959年憲法に法的根拠を有するスルタンを頂点とする体制であり、現在のボルキア国王(1967年即位)は初代のスルタンから数えて29代目に当たる。

ブルネイ国内は1962年のブルネイ人民党の武装蜂起以来、非常事態宣言下にあるが、一般国民は豊かな生活を享受しており、国内の政治治安情勢は安定している。

2004年の憲法改正により立法評議会が再開されるとともに任命議員に加えて直接選挙による議員を有する旨規定されたが,2018年現在,直接選挙が実施されるまでには至っていない。

(2) 行政

(1)政府の構成

ブルネイは独立に際して閣僚会議が設置されるとともに,10の省からスタートした。その後若干の変遷を経て現在は首相府を含め13府省の体制となっている。また2005年の内閣改造においては,首相府内にエネルギー大臣職が新設されたが,ブルネイの産業多角化の強化に伴い,同職は2015年の内閣改造において,エネルギー・産業大臣に(更に2018年にエネルギー(エネルギー・人材資源)・産業省に)名称が変更になった。この変更に伴い,産業一次資源省は一次資源・観光省に改編された。また,2010年の内閣改造で初の女性副大臣が誕生したが,2018年の内閣改造では2名の女性副大臣がいる(国務大臣に相当する検事総長も女性。)。

かかる構成に加えて、各省とは別途に、首相府を事務局として枢密院、王位継承評議会、宗教評議会が設置されており、これらの機関は国王に助言し国王を補佐する役割を有している。

(2)首相府

国王は首相を兼任し、皇太子は閣内において首相府において執務する上級大臣を務めているため、首相府はブルネイの行政の中心の位置を占めている。

首相府は,風俗習慣局,人事委員会,会計検査院,汚職対策局,ブルネイ王立警察,国家治安局,麻薬対策局,情報局,イスラム法典庁(注:長のステート・ムフティは国務大臣相当),ブルネイラジオ・テレビ局,検察庁(注:検事総長は国務大臣相当),ブルネイ経済開発委員会(BEDB)等から構成されており,統治上の要となる組織が集約されている。

(3)財務省 

財務省は,ブルネイ独立時には国王が財務大臣を兼任し,その後実弟であるジェフリ殿下が財務大臣を務めたが,1997年からは再び国王が財務大臣を兼任している。また2005年の内閣改造以降は,第2財務大臣が設置された。

第2財務大臣の下,それぞれ財政担当と金融担当の次官が配置され,財務省は,財務局,税務局,投資庁,歳出局,歳入局,通貨・金融委員会,入札委員会,国際財政センター等より構成されている。2011年1月1日より,ブルネイで初めて中央銀行として,これまでの財務省の一部組織(通貨・金融委員会,金融機関部及び国際金融センター)が果たしてきた役割の一部を引き継ぐ,ブルネイ通貨金融庁(Authoriti Monetari Brunei Darussalam: AMBD)が発足した(但しシンガポールとの通貨交換協定に基づき,両国の通貨等価交換は継続)。

(4)内務省

ブルネイ独立時の内務省発足時には国王が内務大臣を兼任したように、内務省は出入国管理、消防、労働、地方行政の面において主要な役割を果たしている。

内務省は、現在、入国管理局、刑務局、消防局、労働局、ブルネイ・ムアラ地域事務所、ブライト/セリア地域事務所、トゥトン地域事務所、トゥムブロン地域事務所、バンダル・スリ・ブガワン市委員会、クアラ・ブライト/セリア市委員会、トゥトン市委員会等より構成されている。  

(5)外務貿易省

独立以来,国王の実弟であるモハメッド殿下が外務貿易大臣を務めていたが,2015年の内閣改造で同大臣は退任し,国王が外務貿易大臣を兼任している。

創設時は外務省という名称だったが,2005年の内閣改造時に,産業一次資源省の国際関係・貿易局が加わり外務貿易省になり,経済外交が強化された。また,この時,第2外務貿易大臣が新設された。外務貿易省は,政策企画局,貿易開発局,経済協力局,国際貿易局,儀典・領事局,政務局,ASEAN局,国際機関局からなる。

ブルネイ国内には29か国の各国大使館(実館)が存在するが,他方,ブルネイ政府は,海外に大使館・総領事及び国際機関への代表部として43公館を設置している。

(6)国防省

国王は国防大臣及び国軍最高司令官を兼任している。国防省は後方支援,情報,訓練・軍務等の軍人部門と財政・調達,国防政策,開発,戦略研究所などの文官部門から構成され,ブルネイ国軍は,陸軍,海軍,空軍,統合軍司令部,教育訓練部等から構成されている。また,防衛取極により,英軍グルカ兵が駐屯している。  

(7)教育省

教育省は,初等,中等教育部門と高等教育・政策計画部門からなり,前者の下に私立教育機関セクション,国際ユニット,広報ユニット等が置かれ,後者の下に奨学金セクション,技術教育インスティチュート,技術職業委員会等が置かれている。

一時,宗教教育・宗教学校も教育省管轄下に入ったが,現在は宗教省が管轄している。

(8)宗教省

宗教省は、イスラム法局、巡礼局、イスラム教宣センター等より構成され、国内のイスラム教振興を図るとともに、イスラム教に反する行為の取り締まりを行っている他、ザカト(Zakat、喜捨)の徴集及び配分を行う。

国内のイスラムモスク及び礼拝所は、宗教省の管轄下にあり、国家代表モスク、主要モスク、郡モスク、村落モスク、礼拝所、小礼拝所の6種類に分類されている。

(9)一次資源・観光省 

一次資源・観光省は,農業・農産品局、林野局、水産局、観光開発局より構成されている。

(10)通信省

通信省は,通信の他,運輸に関する行政を担当している。同省は,海洋局、港湾局、民間航空局、陸運局、郵政局、気象局より構成されている。通信部門については、かつては情報通信局という部署が存在したが、これが2006年に改組され、現業部門はTelekom Brunei Berhad(通称TelBru)という国営会社になり、行政的権限は情報通信技術産業庁(AITI)に移管された。

(11)保健省

保健省は,資金・資産管理局,健康維持技術サービス局,政策企画局,人材管理局,医療サービス局,健康サービス局等より構成されていたが,2016年に組織再編を行い,人事や会計等官房を担当する組織ガバナンス,政策・フォーサイト,サービス・デリバリー,サービスの4つの機能に分けている。

なお,国民は無料で保健サービスを受けることが出来る。

(12)開発省

開発省は,石油・天然ガスに依存した経済脱却を目指して,開発事業を計画,実施,規制している。また日本の環境省に相当する機能もこの省が果たしている。同省は,公共事業局,土地局,測量局,住宅開発局,都市・地方計画局,環境・公園・レクリエーション局より構成されている。

(13)文化・青年・スポーツ省

文化・青年・スポーツ省は,行財政局,社会福祉事業局,研究開発・国際業務局,青年・スポーツ局,芸術・文化局,国務プログラム局等より構成されている。

体育の振興の他,マレー・ブルネイ文化の振興や弱者に対する募金活動を含む社会福祉活動などを実施している。

(14)エネルギー(エネルギー・人材資源)・産業省

エネルギー(エネルギー・人材資源)・産業省は,人材開発,エネルギー政策及び産業政策を担当している。

(3) 司法・立法・地方

(1)司法

ブルネイの司法制度は,原則として下級裁判所,高等裁判所,上訴裁判所による三審制度となっている。一方で一定以上の訴額の民事訴訟や一定範囲の重大な罪に関する刑事訴訟については高等裁判所や別途設置されている中級裁判所が初審裁判所となっており,これらの場合は控訴審が上訴裁判所でおこなわれる。なお,民事訴訟については,上訴裁判所の判決に不服の場合,開廷前の召喚令状の段階での当事者間の合意がある場合に限り,英国・ロンドンの枢密院(Privy Council)への上訴が認められるが,ロンドンまでの渡航費も含めた高額の訴訟経費を訴訟当事者が負担する必要があり,簡単に利用できるものではなく,実例もごくわずかである。
 
裁判で使用される公式言語は英語(証人を採用する場合は必要な言語)である。
上訴裁判所判事は外国人(非常勤の英国人3名)のみから構成され、高等裁判所にも非常勤の外国人司法委員が所属していることは,公正な裁判を担保することに一役買っている。ブルネイには2015年4月現在31のローファームがあり、109人の弁護士が登録している。このうち60人がブルネイ国籍またはブルネイ永住権を持つ者である。

また,この他,イスラム教に基づき処理する宗教裁判所(シャリア・コート)が存在する。

検事総長が法務大臣の役割を果たしており,裁判官は国王が任命している。

(2)立法

現行の憲法は、司法に関する規定等を置かない他、立法についても法律の最終制定者をスルタンと規定し、スルタンに強力な権限を与えている君主制的色彩の強い憲法である。

本来の立法府たる国会は存在しないが,憲法は立法評議会の規定を置いており,限定的ながら立法に関連した機能を果たす。現在の評議員数は35名であり,国王,皇太子,閣僚,社会的有力者,地区代表から構成される。
 
立法評議会は,1984年の独立以来停止されていたが,2004年8月に国王が勅令を発出し,停止措置を解除し,20年ぶりに立法評議会を招集した。同年11月には憲法が改正され,評議員の一部を選挙で選出することが規定されたが,これまで立法評議員選挙関連法規が整備されておらず,選挙により選出れた評議員はいない。

政党については,2005年8月には国家開発党,ブルネイ国民団結党及び国民覚醒党の3政党が存在したが,2018年8月現在,国家開発党のみが存在している。

(3)地方

ブルネイ国内はブルネイ・ムアラ(約29.271万人),トゥトン(約4.94万人),クアラ・ブライト(約7.00万人),テンブロン(約1.05万人)の4地域から構成されており,各地域は「ムキム」と呼ばれる郡,「ムキム」は「カンポン」と呼ばれる複数の村・集落から構成されている。

具体的には,ブルネイ・ムアラ地域は18郡197村,トゥトン地域は8郡107村,クアラ・ブライト地域は8郡110村,トゥンブロン地域は,5郡107村,計39郡4546村より構成されている。

郡及び村には、住民の選挙で選ばれる郡長及び村長が存在し、他方、地域は内務省の役人が各地域の長を務めている。

(4)治安

自由な政治活動は認められていないが,現時点では,伝統的な社会が維持され,また社会保障が手厚いこともあり,国民の不満が噴出する懸念は少なく国内は安定している。
 
テロについては,現時点では,ブルネイ国内における国際的なテロ組織の活動は確認されておらず,差し迫ったテロの脅威は低いと見られている。