菊田大使の新年のご挨拶

令和8年1月1日



日本の皆様、ブルネイの皆様、2026年明けましておめでとうございます。

私は昨年12月末に着任しましたので、昨年は当地での体験は全てが初めてのことでした。夏には外務大臣政務官の来訪があり、10月末のマレーシアでの日ASEAN首脳会議の際には、就任早々の高市総理とブルネイのボルキア国王との握手シーンがあったのも記憶に新しい所です。叙勲、大学交流、日本祭等の良き思い出も出来、また経済面では大型投資案件決定や直行便の日本の航空会社とのコードシェア再開との報にも接しました。公務を離れても、人々との交流を通じ沢山のことを学びました。本年は大体が2回目の経験となると思いますが、また新たな発見や出会いも多かろうと期待しております。

 ブルネイの方々が日本に対して多くの関心と好意を持っておられる一方で、日本人がブルネイに対して有するイメージには非対称性があると思います。しかし、実際に当地に住んで様々な場所に出かけ、書を読み、色々な方々からお話を伺いますと、この国が多様な魅力に満ちており、敬意に値する国のあり方を実践していることを感じます。独立に至る歴史(日本による占領も含む)、その後の繁栄と国造り(日本との経済交流も含む)の取り組みを学ぶことは実に魅力的です。整備されたインフラと自然との共存、イスラム教由来の深淵な文化、そしてホスピタリティに満ちた人々の笑顔。正直に申し上げて、世界にこんな場所があるのか、という気持ちになります。
 
 ブルネイのアイデンティティとしてのMIB(マレー・イスラム君主制)については、単なるスローガンではなく、国家の運営、国民の生活、文化、教育のすべてに深く根付いた、ブルネイという国を特徴づける最も重要な概念として保持しています。しかしその一方で、それに属しない人々(例えば在留外国人)が公共の秩序に反しない限りにおいて彼ら独自の生活規範に従って行動することは許容します。彼らにイスラム教に帰依することを強制したりはしません。

 自分達と異なる価値観の人々の存在も認め、共存を図る生き方は、ブルネイの外交政策においても同様です。
ASEANにあって、また大国も小国も存在するアジア太平洋地域にあって、ブルネイは他国との融和を基本として自国の存立と繁栄を模索しています。国の一体性を保持するための価値観は国により様々ですが、自分と異なる他者は排斥しようとする傾向も垣間見られる現在の国際社会にあって、こうした生き方はひとつの参考として示唆するものがあるのではないでしょうか。ダルサラーム=平和の郷。私は、国名に接する度に、国家の正式名称に「平和」を掲げるこの国の願いや心意気を感じます。

 経済面では、石油・天然ガス産出国とのイメージが強いブルネイですが、2019年以来原油を輸入するようにもなり、経済構造の多様化を図っています。それは「転換」ではなく「多角化」であり、主要産業の効率化、環境配慮を進めつつ、石油・ガスの川下産業、農林水産業、ICT、サービス業などの育成にも努めています。私はここでもベスト・ミックスの考え方が大切であろうと考えています。
 
 こうしたブルネイの、これまでの繁栄にも将来の発展にも深い関わりを有するのが日本です。ブルネイにおいて活動される日系企業の皆様におかれましては、所謂資本主義自由市場経済とはやや異なる環境で様々な課題やご苦労もあるとは承知していますが、抜群の政治的安定がある国であることも確かです。種々の業種間の経済活動のみならず、伝統的な王室・皇室の緊密な関係も特徴的です。加えて、私は着任以来、日本からの特に教育関係ツアー先としての関心の高まりを感じています。

 本年は国王のご生誕80周年。来年は在位60周年。長期的国家ビジョンの目標は「ワワサン35」。私は、この国がこれからどのような道を歩んでいくのか、日本との関係がどのように進展していくのか、興味と関心をもって見ているところです。
 
 本年は60年ぶりの丙午。一般には行動力やエネルギーに満ちる年と言われます。
 皆様の日々には種々の困難や難しさもあるやもしれませんが、情熱と勢いで力強く乗り越えられ、良い一年となりますようお祈り申し上げます。

 
令和8年1月1日
駐ブルネイ特命全権大使
菊田 豊